HERMÈS IN MOTION -TROT-

2021/ Shop/ Tokyo

エルメス・テンポラリーストア「HERMÈS IN MOTION」の最後の店舗となるのが本館3階の「TROT」です。他の3店舗と同様に、ここでもエルメスの原点と言える馬の脚の動きから形を抽出し、散策を促す動的な場を立ち上げようと考えました。

光沢のある黒いタイル貼りの床と、銀色のステンレスパイプが無数に吊られた天井が特徴的なこのフロアは、他のエリアと全く異なる雰囲気をつくり出していました。その黒さと輝きに満ちた中、島状に用意されたスペースに対し、私達は同調しながらも異なる質を持たせることで新たな空間を浮かび上がらせることを試みます。

スペースの両端にある既存の曲面壁をきっかけとして、数字の8の字を描くように大きく動線を描いていきます。それは無限大記号「∞」にも繋がるラインであり、それ故、永遠の繰り返しが歩調として表れる「TROT」を用いて空間を立ち上げようと考えました。

速足を意味する「TROT」は、対角に位置する脚が揃って同じ動きをする走り方です。その繰り返しの動きのリズムの中に、優雅さと上品な落ち着きを感じることができます。

そこで脚が着地する瞬間を馬の断面線として抽出し、左右で対になるその図像を動線に沿って交互に立ち上げていきます。幅800㎜、高さ1700㎜、厚さ30㎜の透明なアクリルプレートをその断面線でくり抜き、その小口面にサンドブラスト加工を施します。するとアクリルプレートの底部に組み込んだ照明によって、その断面線が受光面となり、馬のシルエットのみが光のラインとなって立ち現われます。その姿を重ねて見ていくと、あたかも馬が走っているように感じられ、その空間に動きがもたらされます。

床を黒く深いカーペット敷きとし、その他の什器もマットな質感の黒色のマテリアルで仕上げていくことで、「TROT」の動きのシルエットのみが相対化され、浮かび上がってきます。アクリルには洋服やシューズなどが掛けられ、光とともに導かれるように人を引き込んでいきます。こうして周囲とは異なる、やわらかな黒の質感の中に動きを纏った光の連続体が現われ、これが「HERMÈS IN MOTION」の四つ目のシンボルとなっていくことを期待しています。

The last store of the Hermes temporary store "HERMÈS IN MOTION" is "TROT" on the 3rd floor of the main building. As with the other three stores, I thought about setting up a dynamic place to encourage walking by extracting the shape from the movement of the legs of the horse, which can be said to be the origin of Hermès.


Featuring a glossy black tiled floor and a ceiling with countless silver stainless steel pipes, this floor created a completely different atmosphere from the rest of the area. In the midst of its blackness and brilliance, we try to bring out a new space by giving different qualities to the space prepared in the shape of an island.


Using the existing curved walls at both ends of the space as a trigger, draw a large flow line as if drawing a figure of eight. It is a line that also connects to the infinity symbol "∞", so I thought about setting up a space using "TROT", which shows eternal repetition as a step.

<Photo> © Nacása & Partners Inc. / Courtesy of Hermès Japon